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「投資が退屈で何かしなくては」と50歳の私が、副業セミナーに申しこみしそうになった話

株式投資

きっかけは「退屈」だった

私は50歳。広島の製造業で管理職をしています。投資歴は7年、日本株のバリュー投資が中心で、PBR1倍以下、配当利回り4%以上、自己資本比率40%以上というシンプルな基準で13銘柄を保有しています。投資元が倍になった。直近2年の年率リターンは27%。

数字だけ見れば、何の不満もないはずだったのですが。

ところが最近、ふと思ったのだ。

「投資、退屈だな」と。

毎日相場を見ても、保有銘柄の含み損益はじわじわ動くだけ。配当は年に2回振り込まれるが売買はほとんどしない。2.5%ルール(配当利回りが2.5%を切ったら売る)を守っています。

これが正解なのは知っていた。バフェットも、グレアムも、ハワード・マークスも、そろって「投資は退屈なほど良い」と言っている。ノーベル賞経済学者のサミュエルソンに至っては、「スリルが欲しいならラスベガスへ行け」とまで言い切っています。

頭では分かっていた。けれど、心は動いていたんですよね。

何か、もう一本柱を作らないといけないんじゃないか」と考えてしまいました。

AIの時代、副業ブームの誘惑

ちょうどそのころ、世間ではAI起業ブームが始まっているように思えました。

YouTubeを見れば、「AIエージェントで月収100万円」「ChatGPT副業で人生が変わった」「一人で年商1億円」という動画が無限に流れてきます。

50歳、製造業の現場マネージャー、定年まで10年。

自分にも、もう一本柱があったほうがいいんじゃないか

そんな焦りに似た気持ちが、いつの間にか自分の中にもありました。

勉強会への参加と、その後

YouTube AIの勉強会に参加した。「日本が世界に負けないように、私はこの活動をしている」と熱弁する。「国の案件にも関わっている」とも言う。

AIを勉強すれば、自分にも稼げるようになるのだろうか。

そして、勉強会の最後の30分。

空気が変わった。

もっと詳しいことが聞きたい方は、有料のセミナーに契約をしてくださいというものでした。

数日間、答えが出なかった。

Claudeとの対話で見えた構造

判断の整理のために、AI(Claude)に話を聞いてもらった。

最初は「AIエージェントで一人起業している人は、どんな仕事をしているのか」という単純な質問から始めた。具体例を聞きたかった。

返ってきた答えは、メディアが煽るような華やかな話ではなかった。

総務省の就業構造基本調査によると、本業フリーランス(一人企業)は約209万人、有業者の3.1%。その内訳は、建設業が最多で約20%、消費者向けサービス業(美容師、整体師など)、軽貨物ドライバー、ネットショップ運営者などが大半を占めている。メディアが煽る「AIで一人起業」は、実数では数%以下のニッチだった。

そして、ブログやYouTubeで「AIで月収100万円」と発信している人たちの収益を分解すると、その大半は「AIで稼ぐ方法を教える教材」の売上なのではないだろうか。実業でAIを使って稼いでいるのではなく、「AIで稼げると教えること」で稼いでいる構造なのではないだろうか。

これは、過去に流行した「不動産投資セミナー」「FX必勝法」「せどり」「仮想通貨」と全く同じ構造だった。テーマだけが「AI」に置き換わっただけではないのかな。

「日本のため」というフレーズの正体

辛口の対話を続けるうちに、講師が使っていた「日本が世界に負けないように」という言葉の構造も見えてきました。

これは、特定の世代に効くマーケティング技法です。「自分は儲けたい」と言われると警戒するが、「日本のため」と言われると批判しにくくなるんですね。商品が「使命」に格上げされ、講師が「商売人」から「志士」に見えるんですよね。50〜60代の、製造業で日本のものづくりに誇りを持ってきた世代に、特に深く刺さるのではないでしょうか。

冷静に考えれば、本当に「日本のため」を思っているなら、価格を下げるか、無料で公開する方が、500人ではなく10万人に届く。情報を出し惜しみして50万円で売っているのは、「日本のため」ではなく「自分のため」の行動ではないのかな。

500人で2億5,000万円稼いでいる人が、なぜわざわざ勉強会の壇上に立って一般参加者に営業しているのだろうか。年商2.5億円なら、本来やるべきは事業の自動化と仕組み化のはずではないのかとか。この矛盾に気づいた瞬間、講師の像は完全に崩れてしまいました。

そして、本質の発見

50万円セミナーを見送る決断はつきました。だが、対話はそこで終わらなかったですよね。

「ではブログをぼちぼちやって、退職時の足しにしようかと思っている」と私が言うと、AIは辛口に返してきました。

ブログで月5万円稼ぐのは、思っているより難しい。月間PV10万〜25万必要で、達成できるのは上位5%。あなたの場合、副業ブログより、投資の研究時間に同じ労力を使う方が、経済合理性は遥かに高い」と。

数字で示された。投資資産が年率15%で複利成長すると、仮に1,000万円からでも10年後に4,046万円、15年後に8,137万円。副業ブログの最大期待値を遥かに超える経済価値です。

そこで、私はようやく気が付きました。

「投資が退屈だから何かしなくては」と思った時点で、私は本道を見失っていたのだと。

退屈は、悪いことではなかったんですね。それは、私の投資が成功している証拠だったんです。バフェットが「素晴らしい投資ほど退屈に見える」と言ったのは、まさにこの状態のことだったんです。

ここで「退屈を埋めるために何かしなきゃ」と動き始めた瞬間、私は短期売買、レバレッジ商品、テーマ株、副業の罠のどれかに落ちていく可能性があったんです。実際、50万円セミナーは、その入口の一つだったかもしれません。

中村天風の言葉で

私は中村天風の積極哲学を、人生の軸の一つにしています。天風は『真人生の探求』の中で、「事を行う前に、まず己の心を観よ」という主旨のことを繰り返し説いています。

「何かしなくては」という焦燥感そのものを、まず観察する。動く前に、自分の心の動きを見る。これができていれば、私は最初から勉強会に行かなかったかもしれないし、行ったとしても50万円セミナーに揺らぐこともなかったかもしれない。

天風の積極哲学は、よく「諦めない強さ」と誤解されることもあるが。だが本当は、「正しいことに集中して、正しくないことから離れる強さ」なんですね。

50万円セミナーを見送ることも、副業ブログを「ぼちぼち」と位置づけることも、そして「投資の退屈は正解の証」と認識を更新することも、すべて立派な積極性だったんですね。

これからやること

私が出した結論はシンプルです。

ひとつ、投資を本業の柱として、もっと深く研究する。Buffett の10原則を一つひとつ、自分の保有銘柄に適用し直します。シクリカルバリューの理解を深める。製造業の現場マネージャーという立場ならではの視点で、銘柄を見直す。

ふたつ、その研究プロセスを、このブログに書く。月次レビューを軸にして、保有銘柄の現在地、今月の判断、注目している銘柄、市場環境への所感を、5年先まで定期的に記録する。書くことで、自分の判断が言語化され、磨かれるのではないかと。これはバフェットが年次株主への手紙で60年やり続けてきたのと、同じ構造かもしれませんね。

みっつ、ブログ収益は期待しない。あくまで投資判断を磨くための言語化ツールとして使う。アフィリエイトは貼るが、月数千円で十分。1年やってみて、運営方針を見直す。

よっつ、情報商材業界とは距離を置く。「AIで稼ぐ」「副業で人生変わる」と煽る発信は、視界に入れない。自分の判断軸を磨くことに集中する。

50万円の使い道

50万円セミナーに払わなかったお金で、何ができるか。

Honda(7267)を100株買える。これは私の次の購入候補だ。配当を5年受け取れば、それだけで5万円。10年保有して株価が1.5倍になれば、評価益と配当で30万円超のリターンがあり得る。

あるいは、ローカルLLM用のPCに投資すれば、製造業のトラブルシューティングRAGシステムを本気で構築できる。これは点検マスターと並んで、私の副業候補になり得る。

50万円のセミナーは、5年後に10万円のリターンも残らない可能性が高い。同じ50万円が、投資判断とローカルLLM構築に使えば、5年後には数十万〜数百万円の経済価値になっている可能性があるのではないかと思う。

これが、機会費用というものなのかな。

最後に

50歳、定年まで10年。

何か新しいことを始めなければ、と焦る気持ちがありました。だが本当に必要なのは、新しいことではなく、既にやっていることを深めることだったんです。

投資、本業、家族、健康、天風哲学、製造業の現場改善、自宅のDIY、点検マスターの開発。私の周りには、深めるべきものが既に山のようにある。これらを浅く広げるのではなく、深く掘る。それが50代の正しい時間の使い方だと、今日改めて気が付きました。

これが、50万円のセミナーに払わなかった私が、AIとの対話を通じて受け取った答えだった。

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