「AI使ってるんですね。調べものに便利ですよね」——そう言われるたびに、少しだけもどかしい気持ちになります。 たしかに調べものにも使います。でも僕にとってAIは、検索の代わりというより暮らしと仕事の相棒に近い。 50歳、製造業の現場で設備の面倒を見てきた人間が、毎日AIを実際どう使っているのか。今回は、それを全部書いてみます。 特別なスキルは何もいりません。先に結論を言うと、使い方には「階段」があって、「調べる」で止めるのは一段目で降りるようなものなんです。
僕のAIの使い方は「4つの階段」
振り返ってみると、僕の使い方はきれいに4段階に分かれていました。上の段に行くほど、AIが「検索エンジン」から「相棒」に変わっていきます。
一段ずつ、実際にやっていることを書いていきます。
階段①:調べる——ただし「事情ごと」渡す
最初はみんなここから始まると思います。ただ、一つだけ僕なりのコツがあって、キーワードじゃなく「うちの事情」ごと渡すんです。
たとえば以前、家の排水が詰まったとき。「排水 詰まり 直し方」と検索すると一般論しか出てきません。 でもAIには、「掃除したばかりなのに詰まった。うちは浄化槽で、こういう構造で、ここまで自分で確認した」と状況を丸ごと話せる。 すると答えが一般論から「あなたの家の場合」に変わるんです。結果、原因はまさかの「ホースの差し込みすぎ」でした(この顛末は別記事に書いています)。
愛車のオイル消費問題のときも同じでした。車種・年式・症状・これまで試したことを全部渡して、仮説を一緒に潰していく。 検索は「みんなの答え」、AIは「うちの答え」。ここが最初の分かれ道だと思います。
階段②:壁打ち——答えより「問い」をもらう
二段目から、AIの本領が出てきます。答えを教わるんじゃなく、考えを壁打ちする使い方です。
僕は日本株の長期投資をやっていますが、AIに「どの株を買えばいい?」なんて聞いたことは一度もありません。それはAIに聞くことじゃない。 代わりに聞くのはこういうことです。
「自分で決めた売却ルールに、今の判断は合っているか?」
つまり、自分で決めたルールから外れそうなとき、それを指摘してもらう。投資でいちばん怖いのは情報不足じゃなくて、感情で自分のルールを破ることなんですよね。 AIは僕の判断の「型」を知っているので、ブレたときに「それは当初のルールと違いませんか」と返してくれる。番人みたいなものです。
仕事の段取りや、チームへの伝え方の相談もこの使い方です。そして心の整理も——これは以前「AIとの会話で、心が軽くなった話」という記事に書いたとおりで、 良い壁打ち相手は正解をくれる相手じゃなく、良い問いをくれる相手なんだと思います。
階段③:一緒に作る——AIは「道具を作る道具」
三段目が、ここ一年でいちばん生活を変えた使い方です。自分専用の道具を、AIと一緒に作る。
僕はプログラマーではありません。製造業の現場の人間です。でも今、僕の手元にはこんな自作ツールがあります。
- 家計簿……市販アプリが合わなくて、固定費をワンタップで一括記帳できる自分仕様に
- 名刺管理……スマホで撮ればAIが読み取ってくれる、自分だけの名刺帳
- 車の記録簿……給油と整備費を入れると燃費と維持費が見えるやつ
- 仕事の記録の見える化……現場の点検や設備の記録を、信号機みたいな色分けで一目でわかる画面に(※仕事のものは中身をぼかしています)
どれも、ブラウザで開くだけのHTMLファイル1個。サーバーも月額課金もいりません。作り方は単純で、 「こういう場面で、こういうことに困っていて、こう使いたい」と現場の言葉で説明する。コードはAIが書く。動かして、直したいところをまた言葉で伝える。この繰り返しです。
道具作りで大事なのは、プログラミングの知識より「何に困っているかを言葉にできること」でした。 それって、現場で長く働いてきた人間がいちばん持っているものなんです。技術の壁が消えた今、現場を知っている人ほどAIで得をすると本気で思っています。
ちなみにこのブログの記事も、AIと一緒に作っています。ただし体験と結論は全部僕のもの。そのあたりの考えは「AI時代にブログは終わるのか」という記事に書きました。
階段④:覚えてもらう——「自分の前提」を1枚のメモにして渡す
そして四段目。地味ですが、効き目はこれが一番です。
AIとの会話は、普通は毎回リセットされます。毎回「50歳です、こういう仕事で、車はこれで……」と説明し直すのは面倒ですよね。 だから僕は、自分の前提をまとめた1枚のメモを作って、会話の最初にAIに読ませています。中身はたとえばこんなことです。
- 年齢、家族構成、住んでいる環境(田舎・持ち家・猫2匹、くらいのざっくりで十分)
- 仕事の役割と、いま取り組んでいること
- 趣味と、進行中のプロジェクト
- 自分の判断ルール(投資の売却ルール、大事にしている考え方など)
これがあると、AIの答えが最初から「僕向け」になります。一般論のステップが丸ごと飛ばせる。 しかもこのメモは完璧に作る必要がないんです。会話の中で「あ、これも前提だな」と思ったら、一行ずつ足していく。 仕事の台帳運用と同じ、追記型。育てるほど、AIが「初対面の物知り」から「長年の相棒」に近づいていきます。
4つに共通するコツ——AIには「コンテキスト」を渡す
ここまで書いて、気づいた方もいるかもしれません。4つの階段、実はやっていることは全部同じなんです。 ①では家の事情、②では自分の判断ルール、③では現場の困りごと、④では自分という人間の前提。 つまり——AIにコンテキスト(文脈・背景)を渡している。それだけです。
AIの答えの質は、質問の上手さで決まると思われがちですが、僕の実感は違います。渡したコンテキストの量と質で決まる。 同じ「どうしたらいい?」でも、背景を知っている相手と知らない相手では、返ってくる答えがまるで違う。これは人間もAIも同じです。
若手に仕事を頼むとき、「これやっといて」だけじゃ良い仕事は返ってきません。 何のための作業か、どこまで任せるか、判断に迷ったら何を優先するか——背景ごと渡すから、期待以上のものが返ってくる。 AIへの頼み方は、部下への仕事の頼み方と同じでした。長く現場でやってきた人なら、実はもう身についているスキルなんです。
逆に言うと、「AIを使ってみたけど、大した答えが返ってこなかった」という人の多くは、 検索と同じ感覚でキーワードだけを投げています。それはコンテキストゼロの「これやっといて」。 AIが賢くないんじゃなくて、賢く働ける材料を渡していないだけかもしれません。
使ってみて、何が変わったか——増えたのは時間より「余裕」
よく「AIで時短」と言いますが、僕の実感は少し違います。増えたのは時間そのものより、余裕でした。
困りごとが起きても「まずAIと状況を整理すればいい」と思える。判断に迷っても「壁打ち相手がいる」と思える。 欲しい道具は「なければ作ればいい」と思える。この「なんとかなる」の積み重ねが、心の余裕になっています。
僕は生活の軸に、中村天風さんの「積極的に生きる」という考え方を置いています。 AIに仕事を奪われる、と不安の種として眺めるのも一つの向き合い方。でも、道具として手に取って、自分の余裕を作る側に回るのも一つの向き合い方です。 同じ技術でも、心の置きどころで毒にも薬にもなる。僕は薬として使うと決めただけです。
① 検索する代わりに、事情ごとAIに話してみる(「うちの場合はどうか」と聞く)
② 答えを聞く代わりに、「僕は何を見落としてる?」と問いをもらってみる
③ 自分の前提を書いたメモを1枚作って、会話の最初に渡してみる(完璧じゃなくていい。追記型で)
4つの階段、と書きましたが、順番に登る必要はありません。今日、目の前の困りごとを一つ、事情ごとAIに話してみる。 たぶんそれだけで、「検索の代わり」の一段上の景色がちょっと見えると思います。
※この記事は、AIを毎日使っている僕個人の体験と見解です(2026年時点)。AIの回答は間違うこともあるので、お金・健康・法律に関わる判断は必ず一次情報や専門家で確認してください。投資の話はあくまで「考え方」であり、特定の銘柄や売買を勧めるものではありません。

